私が中学受験を担当した保護者に、なぜ中学受験をするのか聞いてみたら、意外と(って言ったら失礼?)子どもの成長になると思うから、とお答えになる方が多かったんです。
この記事では【人としての成長】という点で中学受験を解説したいと思います。
中学受験をするにしても、しないにしても、必ず背中を押す内容ですので、最後までお付き合いください。
中学受験のメリット

大きな成功体験となる
長い長い受験勉強が終わり、無事に合格…「頑張ってよかった」「努力が報われた」と思うことでしょう。
受けた本人にとっては、人生初めてとも言える大きな成功体験となるのではないでしょうか。大きな自信にもなります。
中学受験を通して、苦しい思いをしたり、悔しい思いをしたり、一生懸命に努力することは、人生において大変価値のあることのように思います。
勉強の習慣が継続される
受験勉強を長くしてきた恩恵と言えますが、机に向かうという習慣がすでにあるため、一般的な中学生の「勉強習慣がない」という悩みはないように思います。
いや本当は、中学校の宿題が大量にあるため、やらざるを得ない状況であることが多いかな(笑)
ともかく、親が「勉強しなさい」と言わんでも机に向かってくれれば、親としては楽ですね。
能力を伸ばしてやれる
スポンジのような吸収力、今だけの素直さ。(笑)
特に熱中することも好きなこともないけれど、学校や塾での成績は悪くない。
そんな子どもたちが中学受験を通して学力や精神力を鍛えるということは、素晴らしいことだと思います。
良い環境で学習できる
施設、設備、カリキュラム、進学実績
生徒たちのやる気、ハズレ先生の少なさ
中学受験を乗り越え、合格した先での学習環境は、言うまでもなく多くの点で優れていると思います。
学校での学習環境は、少なくとも3年間は変えられません。できる限り良いものを子に提供してやれるのはこのチャンス以外にありません。
入試制度の変更に振り回されずに済む
上に高校・大学までついているような附属中学校であれば、受験をせずに進学できます。
2020年現在、大学入試改革の真っただ中であり、この改革はまだ数年先まで続きます。
大学入試が変わるということは、高校教育の内容が変わる。
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高校教育の内容が変わるということは、高校入試が変わる。
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高校入試が変わるということは、中学教育の内容が変わる。
・・・というように改革はドミノのように次々と起こっています。
そのたびに振り回されるのは、子どもたちです。
少し前に話題になった「英語の民間試験導入の延期」のような事態が起きたとしても、内部進学ができる環境にあればあまり関係のない話です。
中学受験のデメリット

大きな挫折を味わう
志望校に落ちた場合のことです。
どうしてもどうしてもその学校に入りたかったのに、合格することができなかった。
別に行きたくもない学校(もしくは地元の公立中学校)に進学することになってしまった。
たいていは、半年から一年ぐらいで次第に傷は癒えるものです。
しかし、なかなか立ち直れず「ここは自分のいるべき場所ではない」と、学校になじめずに不登校になってしまったという例もあります。
自分ファースト
過酷な受験生活を潜り抜けるうちに、自分さえ良ければ良い、他人を多少犠牲にするのも仕方ない(蹴落とす)という思考になることがあります。
また、家庭内でも、受験生だからということで家の手伝いを免除されていたり、過度に世話をされていたりすることで、まるで王様にでもなったような振る舞いを見せる子もいます。
受験生活がそうさせたというよりは家庭の問題ですが。
親の敷いたレールを歩くだけ
実は、中学受験は子ども自身が希望したわけではないことが結構よくあるんです。
お母さんやお父さんから「〇〇中学校を受けてみない?楽しいみたいだよ」と、10才前後で勧められ、気づけば受験する流れになっていて、期待に応えるべく勉強を頑張りました。
入学したのはいいものの、 「受験」という大きな目標がなくなってしまい、 これから何を頑張ればいいのか分からなくなります。
学校の勉強は難しいのに、モチベーションが維持できない状態に陥り、そのまま成績の低下につながることがしばしばあります。
あくまで私の経験ですが、…男の子にやや多い傾向だと感じています。
入学後、勉強しなくなる
中学に合格することがゴールになっていて、勉強をやめてしまう子が意外に多くいます。
親も「まぁしばらくは勉強を休ませてやってもいいか」という気持ちになりがちですしね。
また、無難に過ごせば内部進学で大学まで行けることが分かっているから、勉強をサボる子もかなりいます。
私たちのような個別指導塾が彼らの受け皿になっているので実情が分かるのですが、地頭がいいだけに「もったいないな」と思っています。
進級すら危ういという状況で塾に駆け込んでくる生徒の多さに毎年驚きます。
地元の友人がいない
私立中学校に進学した親子のよくある悩みとして、地元の学校を離れてしまったがために、友人がいなくなってしまうことです。
小学校のうちに仲良くしていた友人も、やはり会わなくなると疎遠になってしまうもの。
ちょっと寂しいです。
中学受験をした教え子が20才になるときに「振袖は着たいけど、地元に友人がいないから成人式には参加しない」と言っていました。確かに一人で行っても楽しくないよね…。
我が子に中学受験をさせるか

結論から言うと、中学受験をさせる気は今のところありません。
が、こういう状況になったら中学受験させよう、という条件はいくつかあります。
住んでいる地域の環境
「一学年上の生徒はガラが悪い」「中学校の周辺の治安が良くない」「悪い噂のある先生がいる」
こんな状況なら、地元を離れて中学受験をさせることも検討します。
安心安全は大事。
学業より熱中できる何かが見つかること
習い事でもいいし、趣味でもいいし、これは勉強よりも専念させてやりたいな、と思うことがあれば、中学受験させるかもしれません。
もちろん中高一貫校です。
高校の受験勉強が障害になって、熱中すべき大事なタイミングを逃してほしくないからです。
強豪の部活に入りたい
私立だと、全国大会に常連の部活がたくさんあります。
本人にやる気と覚悟があり、学校とのご縁があるようならば、受験させます。
本人が「中学受験したい」と言ったとき
本人が「中学受験したい」と言うならば、受験させます。
ただし、中学受験するからには当然、合格を目指してもらわねばなりません。
本人の強い意志が確認できるのであれば、そのときは全力で支えるのみです。
地元の公立校も悪くない
公立校には、 親の職業も、経済力も、価値観も異なる家庭の子がいます。
そういった様々な人に触れることで、「人間」や「社会」というものを理解していけるのではないかと思うのです。
私が中3のときのクラスには、
医者の娘、弁護士の息子、 下ネタばかり言う男子、午後から登校してくるタバコ臭い女子、母親をガンで亡くした子、発達障害の子など、本当に多種多様な生徒がいました。
やる気のない英語の先生、準備室で授業中にパンとコーヒーを食べている美術の先生、生徒に抱きついた男の先生、男子ばかり優遇する女性の先生がいました。
まるで社会の縮図ですよね。
そんな環境も悪くなかったと、自信をもって言えます。
苦労することもありましたが、私は大変たくましくなりました。
余談:ちよの中学時代
小学校時代の人間関係が嫌で、母に「私立中に行きたい」と泣きついたことがあります。
結局、地元の公立中に進学したのですが、楽しい思い出3割、退屈な思い出7割でした。
成績は中1・2がピークで、中3で伸び悩みました。
ろくでもない先生が何人かいました。
いまだに付き合いのある友人はいません。
一時期「学校にいきたくない」と毎日母に言っていました。
もし、今から小学生に戻って中学受験できる状況にあれば、するかもしれません。
でも、当時、母と話をして中学受験しない選択をしたことは、後悔していません。
矛盾してますかね…(^^;)
全ては結果論で、放り込まれた環境でやっていくしかないんですよね。
そうやって環境や人に揉まれながら、たくましくなっていくんだろうなと思います。
それではこのへんで。グッドラック☆